イラスト表現を、DEIの視点で問い直す。「誰かを排除しないか」の観点から制作して得た気づき
DEIコミュニケーションガイドに掲載するオリジナルイラストを制作した際、「誰かを排除していないか」「固定観念を助長しないか」などの視点からイラストを描けているかについて、クライアント担当者の方と何度も対話をかさねました。
この記事では、その制作過程で得た気づきについて、制作者側の観点でまとめます。

「逆張り」もまた、固定観念から出発している
「写真・動画・イラストを使用する際の注意点」を説明したページで、本文内容を補足するため、次のような3枚のイラストを作りました。

上の3枚は、左からそれぞれ
・偏りがないか
・固定観念を助長していないか
・特定のイメージを植え付けていないか
について、イメージを補足するイラストです。
「偏り」「固定観念を助長」しないようにしたいと思い、左・中央のイラストでは、よく見聞きする性別役割の固定観念(女性が家事・育児をし、男性が仕事をする)の逆のシチュエーションを表現しました。

アプローチ方法として、家事育児の場面で男性を、反対に仕事をする場面で女性を登場させれば、固定観念にもとづかないイラストにできるのではと思ったのです。
しかし、担当者の方から「逆張りもまた違うのではないか」とコメントいただいたことで、次のことに気がつき、はっとしました。
逆張りもまた、固定観念をもとに出発している
「固定観念の逆をいけばいいのだ」という思い込みが的外れだったことに気がつきます。
「女性=家事」という偏見を打ち消すために「男性=家事」を描くことは、依然として「性別の固定観念」を意識した上での表現。
バイアスをなくしたいにも関わらず、バイアスから出発していたことを反省しました。
シルエットで抽象化して表現
先ほどの3枚の絵では、そもそもバイアスを起点に出発していること、多様性を描けているかといえば、そうでないことが課題でした。
イラストをそれぞれの説明に対して1枚ずつ作るのではなく、1枚の絵に3点を集約すればよいのではないかというアイデアがでました。
そこで、アプローチ方法を根本から変更することに。人物の性別や属性を表す具体的なパーツは省き、人物をシルエット化し、抽象的に表現することにしました。

これは「逆張り」とは異なるアプローチで、そもそも私たちが特定の性別、服装、見た目の人々に対し無意識に抱きがちな先入観となるパーツ・アイテムを描いていません。
インクルーシブな視点をもってレンズを覗くと、特定の性別、人種、状況などの属性やバックグラウンドに関わらず、誰もが多様な存在なのだという意図を込めています。
排除の構造をつくる「普通」
たとえば、一個人のなかにあるバイアスは、コミュニケーションの過程で、言葉や表現にあらわれることがあります。
もしそれがコンテンツ化されて、そのデザインや言葉が多くの人に拡散されると…….?
やがて「普通」「スタンダード」として社会に定着し、その社会をかたちづくる構造のもとになっていきます。
もし私たちひとりひとりが、言葉や表現やビジュアルの表層部分だけでなく、その背景や、自分のなかにある無意識のバイアスに気が付くことができたら、どうでしょうか。
コンテンツを作る立場で言えば、普段何気なく選んでいるイラストや写真素材を、インクルーシブなレンズを通してみてみることで、バイアスを含んだ表現が受け取り手のなかに定着し、やがて「普通」となることを、防ぐことができるのではないかと思います。
「普通」「スタンダード」が定着した社会では、そこに当てはまらない人を疎外・排除する構造になってしまいます。
コンテンツ内のひとつの表現をインクルーシブな見方で捉え直していくことは、ささいな取り組みかもしれませんが、私個人にできる一番大きなことだと思いました。
コンテンツを作る側としていつも問いたいこと
今回の気づきをもとに、コンテンツを発信する方に向けて「この表現で、だれかを排除したりしないか?」などの確認に活用できるチェックポイントを共有します。
①誰が「普通」として描かれているか
デフォルトの人物像(体型、肌色、服装)は何を前提にしているか。
「中立」に見える描写は、特定の属性を標準化していないか。
②誰が「いない」か
意図的に排除しているつもりははなくても、結果として「いない」属性はないか。
「描かれない」ことは「含まれていない」というメッセージになる。
③役割や属性が結びついていない
特定の属性(性別・年齢・外見など)と役割・場面を、無意識に紐づけていないか。
バイアスを出発点にした「逆張り」は、必ずしも適切な解決策ではない。
対話をすることで、気づきを得ることができる
私たちは誰もが、何らかのバイアス(偏った見方)をもっています。
アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)という言葉があるように、自分自身がそのバイアスに気がついていないこともあります。
私自身も、「女性を家事の場面に出さない」「男性を育児の場面に出す」と、固定観念の「逆張り」のアプローチをとった時点で、バイアスを出発点にしていた、ということに気がついたことは、冒頭でお話しました。
そもそもバイアスのかかった表現をしたくなかったのに、バイアスの逆から出発しようとしていたのです。
これは、今回の制作を通しての大きな気づきで、「自分にも無意識のバイアスがある」ことに気がつくことができたのは、クライアント担当者の方と対話をかさねたことによるものでした。
さいごに
この記事でご紹介した事例とアプローチ方法は、正解ではなく、ごく一例です。
届けたい相手やコンテンツの内容によって、表現方法は変わると思いますし、場合によっては、特定の属性や役割を意識し、それを表現したビジュアルを作る必要も出てくるかもしれません。
ただ、どのような相手に向けた発信であれ「誰かを排除しないか」「バイアスを助長・再生産しないか」などと、自分の見方だけで考えるのではなく、異なる立場にある人と対話し、ひとつひとつ確認してみるのはよい方法だと思いました。
私自身も、作る立場として、この表現で本当に良いのかと問い続けたいと思います。
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