DEIコミュニケーションガイドの表紙イラストができるまで。ラフ案からの制作過程・どう考えたかを言語化しました
普段、デザインを手段に「どう見せるか」「どう伝えるか」をご提案することが多いのですが、ここ1年はデザインに加え、コンテンツの内容をビジュアルで補足・補強するようなイラストを作る機会を多くいただくようになりました。
DEIコミュニケーションガイドの制作では、表紙のイラスト・本文中の内容を補足するイラストを、「これを描いてください!」と具体的なお題がある状態からではなく、
そもそもガイドのコンセプトを伝えるために「何を描くのがよいか」の状態からご提案しながら、クライアント担当者の方と対話をかさね、模索しながらイラストデザインをつくり上げていきました。

この記事ではDEIコミュニケーションガイドが最終形に至る過程について、
①コンセプト作りと手書きラフ案が完成するまで(第1段階〜第3段階)
②ラフ案のデータ化から完成形まで
に分けて、まとめたいと思います。
コンセプト作りと手書きラフ案が完成するまで
まず、ご依頼時のヒアリングをもとに、手書きラフ案を作成しました。
冒頭でもふれた通り、今回は「これを描いてください!」などと具体的なお題があったわけではないため、「そもそも何を描くか」「何を描くのが効果的なのか」から考え、イメージに起こし、認識をあわせていくラフ案づくりが、一番時間を要した段階でした。
ラフ案が固まるまでの過程は、次の3つの段階に分かれています。
第1段階
まず、ご依頼時にお伺いした内容や、ガイド全体の内容から、「言葉」「多様性」などのキーワードを起こし、そのキーワードをもとにしたラフ案を2案作り、ご提案しました。

この段階では、他社がリリースしている同様のコンテンツのビジュアルと「多様性」の表現の面で差別化ができていない、という課題が浮かび上がります。
クライアントさん独自の視点や打ち出したい点について、解像度を上げた状態で認識あわせをしたいと思い、slackでお話ししながらお互いのイメージをお話する機会をいただきました。
背景や意図、目指したいこと、競合する内容の他社資料とはどのように差別化していきたいか……などをお話いただきながら、ビジュアルに変換したときのイメージなどを、ひとつひとつ言葉にしてすり合わせます。
言葉を頭の中でビジュアルに変換して、出来上がったイメージを再び言葉にして伝えるという、言葉とイメージの翻訳のような作業でしたが、確認する機会をいただいたおかげで、最初頭の中でイメージしていた「多様性」のひとつのキーワードが、より解像度の高いイメージになっていきました。
第2段階
イメージの解像度が上がったところで、再びラフ案を書き起こしました。
「人物を起点に、さまざまなかたちが「人権」をあらわすハートを起点に飛び出し、(クライアント企業の)発信や支援によって、実現したいことに近づいていく様子」を描いています。

前回からはイメージに近づいたものの、この段階でまた2つの課題が浮かび上がりました。
①「人権」の表現方法について
人物にハートのアイコンを持たせ「人権」の表現としてご提案したのですが、「ハート」のアイコンで表すと「思いやり」ととらえかねないのでは?とご指摘をいただいたことで、はっとしました。「人権」は、「思いやり」とは異なるからです。
②制作者側(私)の出発点の認識違いについて
現在、社会には「インクルーシブでない」言葉がまずある。このガイドは、「インクルーシブでない」言葉を前提に、言葉・表現の背景を知り、表現を起点に企業や個人がその取り組みを生かすことで「インクルーシブな社会」になることを目指しています。
今回、この「変化」がポイントだったのですが、制作者側(私)の認識違いがあることに気がつきました。社会には「インクルーシブな言葉がもうある」前提から思考を出発していたのです。
このガイドの前提は「まず前提として、インクルーシブでない言葉(言葉や表現のもととなる歴史的・文化的背景を無視し、誰かを排除したり、偏見を助長したりすることにつながる言葉・表現)がある」こと。
それについての知識をもとに、企業や個人がその取り組みに活かし、インクルーシブな社会を実現する一助となること。
「人権」をどう表現するかを再考し、「インクルーシブでない言葉がまず現在の社会にあって、このガイドはそこに働きかけ、変化を起こすきっかけになること」を含める必要があったのです。
第3段階
第2段階の課題をふまえて、再びラフ案を描き直しました。

このラフ案で伝えたかったのは、このガイドを通じて読み手や社会に起こる「変化」です。
2人の人物が書いたり発したりする言葉には「読める文字」「読めない文字」が混在しています。
発された直後は回転・反転していて「読めない文字」なのですが、上部に向かうにつれ、しだいに「読める文字」へと変化し、社会全体へと広がっていきます。
「読めない文字」「読める文字」 というのは「インクルーシブでない言葉」「インクルーシブな言葉」の例えで、
「読めない文字」
→言葉・表現の背景を無視した「自分視点の見かた」を前提とし、誰かを排除したり無意識の偏見につながるような「インクルーシブでない言葉」を例えたもの
「読めない文字」は、対話と相互理解を重ねることで、しだいに「読める文字」=「インクルーシブな言葉」へと変化する、という意図をもたせています。
飛び出す文字が変化していく様子は、「言葉の捉え方やその歴史的文化的背景に目を向けることは、言葉の選択だけでなく、人をどのように理解し、どう扱うか、接するかにも影響を与える。それは、人の権利をどう扱うかにも直結する」意味をもたせることで「人権」にもふれています。
ラフ案のデータ化から完成形まで
このようにラフ案のやりとりを何度かかさね、最終案をもとにイラストを作っていくことに決まりました。

手書きのラフ案をPC上(Illustrator)でデータに起こします。

人物から飛び出す文字は、各言語に対応するフォント仕様が異なることもあり、文字によって太さがばらばらなのが気になりました。
文字の太さを揃え、その他の図形とともに大きさや位置など、全体バランスを整えていきました。
この段階でカラーを入れます。本文ページの印象と揃うよう、コーポレートカラーの濃淡を使用しながら、飛び出す文字に多色を入れることで、「読めない文字」から「読める文字」への変化の過程で文字が鮮やかに色づいていく様子を表現したものです。

このイラストに対し、担当者の方から、全体的に色味の印象が薄いように感じること、人物に色が入っていてもよいのではないかとフィードバックをいただきました。
同時並行で、本文ページに掲載するレンズのイラストを制作していたのですが、このレンズのイラスト中の人物たちの配色イメージ(多色使い)が「多様性」のイメージとよく合うと、共有いただきました。

そこで、表紙でもこのイラストと同じ方向で「多様性」を表現できないかと模索しました。
また構成面では、以下のようにアラビア語・タイ語などの文字を加えたほか、ジェンダーや車椅子などを表すアイコンを新たに追加し、全体のバランスを調整します。
文字や形だけでなくアイコンを加えると、伝えたいことが一気に明確になりました!

担当者の方とSlackで画面を共有しながら、色味について数パターン検証しながら話しあい、最終的に、双方が納得したこの配色に決まりました。

多色使い案のベースとなった本文中のイラストについても、最終的に表紙の色と揃え、このような配色に決まりました。先ほどのカラーと比べ、より鮮やかな色合いになったと思います。

レンズ本体はコーポレートカラーをベースにしており、人物の一部にもコーポレートカラーをあてることで、「多様性」を表現しつつもコーポレートカラーとの関連性も維持しています。
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